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つきねはジト目になると、すぐに事実を確認してくる。
「本当のところは?」
悲しいことに、最愛の妹はここねの言葉を少しも信じていなかった。
ここねもすんなりと白状する。
「まねがいつの間にかやってくれてました。なんかね、人数も少ないし機材とかの準備もそんなに手間はかからないから、軽音部に少し時間をくれませんかって交渉したみたい」
桜ヶ丘まねは中学校からの付き合いで、音楽を歌をやりたいというここねの夢をバックアップしてくれる大切な友人だ。音咲高校に入ってからも軽音部を作るのに協力してくれた。
その働きぶりはまさに敏腕マネージャーと言っていい。
今のところ音咲高校軽音部は、ここねとまねのたった二人で構成されている。
「まね先輩さすが」
つきねは感嘆の声を漏らした。
「うんうん、少数精鋭たる軽音部の強みだよね!」
「部員が少なすぎて、最初ステージ確保できなかったんでしょ……?」
「いいのいいの、私の軽音部は。今はこれで」
と、ここねは笑いながら言う。
(私の軽音部……かぁ)
つきねは姉の言葉を心の中で繰り返した。
さっき口にしていたように音咲高校の軽音部の創設者・発起人は、姉のここね自身だ。
入学してすぐにここねは、軽音部を作るために動いた。部活動申請書を作成するために、顧問になってくれそうな教師も探したそうだ。もちろんこの時もまねに手助けしてもらいながらだが。
幸い音咲高校は生徒に機会を与えるという方針で、申請条件が緩めだった。だから部として認められたが、その代わり活動はきっちり真面目にしなければならない。
ただ、その点に関してつきねは心配していない。
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